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第9話【正体】


小波(これで・・・これで決めるぅぅぅ!!!)
小波は、今もてる最大限の力を振り絞り、全身全霊の力を込めたボールを繰り出した。
小波(見守ってくれ!!秀人さん!!)

ギュルルルルル

海堂(インハイのストレート・・・これを待ってたんだ!!)
海堂は完璧なタイミングでボールを迎え撃つ。
海堂(もらったぁ!!!・・・・・・・えぇっ!?)

ズバァァァァァァン

神崎「ストライークバッターアウッ!」
ボールは、神童のミットの中にがっちりと収まった。
膝をつき、呆然と神童のミットに収まったボールを見つめる海堂・・・。
完璧に捕らえたはずだったのだ。海堂のイメージでは、ライトスタンドへ運んでいるはずだったのだ。
一方、マウンド上には渾身のガッツポーズを決める小波の姿があった。
小波(やりましたよ。秀人さん・・・今の三振は貴方のお陰です・・・。)
その後、2死満塁のピンチは続くものの完璧に立ち直った小波の前に藤堂は3球三振にされてしまう。
小波は、ベンチに颯爽と戻ると、対海堂の時のことを思い出していた・・・。
小波(よかった・・・。秀人さんに教えてもらわなかったらいかれてたな・・・。)
一方、センターの守備につきながら、海堂も対小波のことを思い出していた。
海堂 (完璧に捕らえたはずだったのに・・・バットにミートする瞬間ホップしたように見えた・・・)


話は、昨夜に戻る・・・・


秀人「今日は・・・君の持ち味のストレートの改良から始めてみようか。」
突然の言葉に呆然とする小波。変化球を教えてくれるのではなかったのか・・・・。
秀人「今の君には変化球はまだ早い。試合は明日なのだから、今できる最大限の努力をしよう。」
そう言われ、何百・・・何千球とひたすら投球を重ねた。
小波「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」

ギュルルルルル

グォォッ

小波(う・・・浮いた!?)

ズバァァァァァァン

秀人「いってぇ!!!」
秀人はあまりの激痛にミットを振り飛ばした。
手は赤くはれ上がり、ミットも糸が切れてしまっていた。さらには、焦げ臭い匂いも放っている・・・。
小波は、今の投球にただただ驚くだけだった・・・。信じられなくて、思わず自分の手を見てしまう。
小波の手は、ブルブルと震えていた・・・。手も、信じられないといった感じなのだろう。
秀人「よくやった!今の球が、君に教えたかった球だ。」
そう言われ、ようやく信じることができた小波は、嬉しさを爆発させた。
小躍りを踊りだし、大声で叫びまくる。周りの家々の電気が灯りだしたので、慌てて叫ぶのはやめたが・・・。
小波「今の・・・今のこの球の名前はなんなんですか!?」
秀人 「ジャイロボールと言われる球種だ。だけど、僕がアレンジしたものだから、オリジナルボールだな。」
ジャイロボール・・・それは、プロ野球ではもちろん。メジャーですら投げられる選手は少ない。
小波は、再び感激に浸った。プロですら困難な球を自分のものにできた。
ただでさえ早いストレートの小波にジャイロボール・・・。まさに、鬼に金棒である。
秀人「その球に名前を付けてみたらどうだい?」
小波「名前・・・」
そして、10分近くじっくりと考えて生まれた小波のオリジナルストレート・・・。


河上「6番 ピッチャー 小波くん」
突然アナウンスされた。どうやら小波の打順らしい・・・。
場面は2アウト満塁。先ほど小波が抑えたものとまったく同じシチュエーションだ。
河上が飛びっきりの笑顔でこちらに微笑みかけている。
俺はそれに答えるかのように、Vサインを出した・・・・。


神崎「今日はお疲れ様。明日は部活は休みだ。ゆっくり休養をとっておけ。以上。」
そして、俺達は各自解散を始めた。
帰り支度も終え、校門から出た小波は足を止め、いまだに手に残るあの感触をかみ締めた・・・。
そして、小さな小さなガッツポーズを決めるのであった・・・・。

【紅白戦試合結果】

白組
紅組





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