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第5話【どうしよう】


迎えた土曜日・・・この日の俺は絶好調であった。
朝は試合開始6時間も前の午前6時に目を覚まし、早くも公園で投球練習を重ねた。
俺の持ち味でもあるストレート・・・。この球で和田先輩を勝たせはしない・・・。
相手が海堂先輩でも絶対に抑える。河上を簡単に譲るわけにはいかないのだ・・・。


そう。俺は昨日の夜、練習を終えた後、河上のいなくなった公園で秀人さんに相談したのだった。
秀人さんは、河上のお兄さんだったので、抵抗はあったのだがさすがはプロ戦士の秀人さんである。
俺の投球にどこか迷いがあると感じたのだろう・・・。誰にも言わないという約束で相談したのだ。
突然の実の妹への思いを最初は驚いたようであったが、真剣に聞いてくれた・・・。
そこで、俺は気づいたのだ。いつからかは覚えていないが、俺は河上が好きだということに・・・。
そうと気づいたのならば、和田先輩に河上を譲るわけにはいかない。
俺が和田先輩に勝てば、河上が付き合うことを考える必要もない。
その実現の為に・・・今の俺には、スタメンになることと同じくらい、河上のことも大事だった・・・。

ヒュッッ
昨日の夜のことを思い出していると、不意に何かが目の前を通り過ぎた。
飛んできたものを見てみると、どうやら野球ボールのようである。
俺はすぐさま飛んできた方角を見た。
そこには、小向と河上がいたのだ。
小波「お前ら・・・なぜここに・・・?」
小向「俺はお前と同じ・・・かな。やっぱ緊張しちゃって(笑)」
俺は、小向とは違うということは分かっていた。だが、隣に河上もいるので何も言わずにいた。
河上「私は犬の散歩のついでに小向君と会って・・・一緒に来たみたいな。」
見てみると、河上の隣には小さな犬がいる。ウエルッシュコーギーペングローブという種類の犬だ。
と、ここで最も重要な話題を振ってみた。
小波「てか・・・お前らボールを投げつけるなんて危ないだろ!!!」
そう言うと、すぐさま二人からカウンターが飛んできた。
小向「いくら呼んでも気づかずに投球練習を重ねるからだろ?」
河上「そうよ。何度も何度も呼んだんだから・・・。」
どうやら、俺はよほど集中していたらしい。それだけ今日の試合に賭けるものがあるということだ。
俺達はこの後、軽くキャッチボールを3人でした後、一緒に学校へ向かうことにした。
学校へ向かう途中で、「絶対に勝とうな!」と、俺は意気込んだ。
それを聞いて、河上は笑顔で「もちろん。」と返し、小向も「おうっ!」と返事をした。


そして、学校に到着するとすでに練習をしている部員もいた。
俺たちも、混じって練習を行うことにした。
体が軽い・・・。今日の試合は俺のものだ。そう思えるほどだ。
そして、いよいよ試合開始の午後2時を迎えた。
神崎「みんな集まっているな?それでは今日の紅白戦のチームを発表する。」
神崎が1人1人名前を呼び、紅白のチームが分かれた。
そこで俺は、予想もしなかった事実にぶつかることになった。
両チームスターティングメンバー一覧
名前
守備
学年
打順
名前
守備
学年
矢部 進
左翼
大場 達人
遊撃
冬野 明
二塁
織田 慎二
左翼
野原 悟
一塁
海堂 翼
中堅
乾 健介
三塁
藤堂 優太
一塁
桜井 大樹
遊撃
田中 純
二塁
小波 翔
中堅
橘 和也
三塁
小向 光
右翼
佐伯 幸広
捕手
神童 海
捕手
松井 一樹
投手
和田 貴史
投手
村山 雅史
右翼



神崎「呼ばれなかった者は、今大会は使わん。今日は隅で練習でもしていろ。」
そう冷たく言い放った。呼ばれなかったものは、顔を下に向け、とぼとぼと歩み始める。
その中には、今大会が最後となる3年生の先輩もいた。必死で涙をこらえているのがわかる。
これが実力主義である聖都高校野球部・・・その現実を改めて体感したという感じだ。


しかし、そんなことはどうでもいいのだ・・・。なぜ俺が外野なのか・・・。
しかも和田先輩と同じチームとは・・・俺はこの試合どうすればいいのだろうか・・・。
勝たなければスタメンはない。しかし河上を奪われてしまう・・・。
そんなのは嫌だ・・・。俺は、この紅白戦どうすればいいのだろう・・・。
失意の中外野のポジションに向かう。俺の足取りは進めば進むほど重いものとなった・・・。







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